「東欧 好きなモノを追いかけて」
チャルカ店主、久保さんの新しい本「東欧 好きなモノを追いかけて」を読むと、粛々と好きなことを続けることの素晴らしさをあらためて実感することができる。久保さんは、20年前に友人とともにチャルカを立ち上げて、仕入れのために東欧を旅したことから始まり、それからずっと年に数回、チェコやハンガリー、ルーマニアに旧東ドイツエリアへの旅を続けている。
「どうして東欧だったんですか」それまでさまざまな国を旅していた久保さんが東欧に導かれるように深く入りこんでいった理由を尋ねると、その答えはとてもシンプルだった。「やっぱり東欧のものや人が好きなんですよね」。
ハンガリーで見つけたノートからはじまり、黄ばんだザラ紙に、印刷は版ズレしているチケットや伝票などの紙もの、戦前にフランスやイギリスへの輸出用に手作業に近い形で作られていたチェコのガラスボタン、歴史や文化とともに作った人の人柄までも感じさせてくれるハンガリーの刺しゅうなど、通い続けるうちに、久保さんの興味とともに扱うモノが広がっていく。それとともに、久保さんの東欧好きもますます深くなっていく。
もちろん、好きを仕事として続けていくには、楽しいことだけでなく、苦労やトラブルもたくさんあるはずで、この本には旅先でのトラブルや続ける上での苦労も少し語られている。その分、好きなものに真摯に向かいながら、丁寧に愛を持って仕事を続けていることが分かるし、旅を仕事にすることのひとつの理想像を教えてくれるようで、読んでいてとてもワクワクした。
そんな久保さんとはじめて出会ったのは、まだトラベラーズファクトリーもできる前の10年前のことだった。その頃の僕らは、トラベラーズノートを作ることで、旅を好きが人だったら誰もが思うであろう、旅を仕事にすることとか、好きを仕事にするということの意味が、少し分かりはじめてきた。
「チャルカの東欧雑貨買いつけ旅日記」を読んでいた僕らは、まさに全力で素敵に旅を仕事にしている人たちとしてチャルカに憧れを持っていた。だけど最初に会った時は、イベント中だったこともあって、そんな思いを伝えることもできず、軽く挨拶したくらいで終わってしまった。それから大阪に行くたびに、当時は堀江にあったチャルカに立ち寄った。いつも久保さんには会えなかったけれど、スタッフの方にトラベラーズタイムズやトラベラーズブレンドを預けて、足跡を残した。
そんなある日、突然久保さんから「東京に出張に行くので一度お会いしましょう」とメールをいただいた。僕らは喜んで「ぜひ!」と返事し、バックパックを担いでやってきた久保さんと一緒に飲みながら、旅のことやノートのことなどをたくさん話をした。そうやって久保さんとのお付き合いがはじまった。トラベラーズファクトリーができると、早速イベントを開催していただき、その後も何度か久保さんにも来ていただいたのだけど、ここ数年はお互いにバタバタしていたこともあって久しぶりのイベント開催となってしまった。
今回は、出張コーナーに加えてコラボレーションリフィルを作らせていただいた。「こんな紙があるんだけど...」と、50年以上前の動物の絵が描かれたチェコの紙を送っていただき、それをパスポートサイズリフィルの表紙に貼ったものを作った。たくさんの数を作れなかったということもあるけれど、とても人気であっという間に売り切れてしまった。
そして先週末は、トラベラーズファクトリーの2階に、久保さんが東欧で見つけてきた紙もの、文房具、おもちゃ、グラスにポット、布ものなどをずらりと並べた出張蚤の市を開催。久保さんと出会った時のことを思うと、まさに夢のような空間で、自分たち自身も久保さんのお話を聞きながら、宝物探しをするように、買い物を楽しんだ。
チャルカは今年で20周年です。トラベラーズノートをはじめて13年、トラベラーズファクトリーをはじめて8年弱。そんな僕らが言うのはおこがましいですが、旅を仕事にすること、好きを仕事にすることの楽しさと同時に苦労や大変さも少しは分かってきたからこそ、20年続けることの素晴らしさを実感できます。20周年おめでとうございます。そして、これからもまた一緒に楽しいことをやりましょう。チャルカ出張コーナーは6月10日まで開催しています。よろしくおねがします。