2019年6月17日

Decade

20190617b.jpg
 
10年前の2009年7月のこと。かねてよりおつきあいのあったプロダクトデザイナーの山崎宏さんが主催のイベントが神楽坂であり、チームみんなでお邪魔した。
 
山崎さんと親交のある何人かのデザイナーが栓抜きをテーマにプロダクトを作り、展示するというイベントだった。家で飲むビールはほとんど缶という時代に、あえて時代遅れとも言える栓抜きに焦点をあてるという山崎さんらしいイベントだった。イベント会場では、それらの栓抜きを実際に使えるように、ビールも提供していて、さらにつまみとなる料理も提供していた。その日はオカズデザインさんが料理担当だった。僕らは、そこではじめてオカズデザインさんと出会った。その1ヶ月後に彼らのアトリエ、カモシカにご招待いただき、お付き合いがはじまった。
 
そして、先週のこと。そのイベントからちょうど10年ということで、山崎さんが再び当時のメンバーに声をかけ、前回と同じ神楽坂のギャラリーでイベントを開催すると聞いて、僕らは感慨深い気持ちで足を運んだ。久しぶりに、山崎さんやオカズデザインの吉岡夫妻とお話をし、さらにビールを飲みながら、オカズデザインの料理を楽しんだ。
 
僕は何種類かの料理の中からパテをオーダー。実はパテは、10年前にオカズデザインさんののアトリエ・カモシカで、生まれてはじめて味わい、いたく感動した思い出の食べ物だった。この日はイノシシの肉で作ったという美味しいパテをいただきながら、しみじみと10年前のことに思いを馳せた。
 
10年前の2009年は、僕らにとってその後も長くお世話になる方とたくさん出会った年だった。神楽坂の栓抜きイベントに行く前には、蔵前のアノニマスタジオで開催していたイベントに立ち寄り、チャルカの久保さんと初めて出会った。その年の夏休みに、チームのメンバーと車で徳島へ行き、アアルトコーヒーの庄野さんに初対面した。TRUCK FURNITUREの黄瀬さんに、AIRROOM PRODUCTのかもさんに出会ったのも2009年だった。
 
3月に、青山スパイラルで初めてのトラベラーズのイベントを開催。自分たちで空間を作り、実際にトラベラーズノートを使ってくれている方々をお会いすることで、大きな刺激を受けた。その後、旅祭の出展に、BOOK 246/CAFE 246でのイベント、さらにオカズデザインさんや庄野さんたちと出会い話をすることで、何かがうねりを伴いながら転がっていくような予感がした。そして、その翌年の3月に再びスパイラルでイベントを開催した時には、その予感が確信へと変わった。
 
トラベラーズノートには、とてつもない不思議なパワーがあって、それまでの仕事の領域や業界、国境を超えた広い世界へ僕らを導いた。僕らが好きなモノを作る憧れの人たちと、自分たちが作ってきたトラベラーズノートに共感し、好きだと言ってくれる人たちに、誠実に向かい合うことの意味を知った。トラベラーズノートと自分たちの直感がコンパスとなることで自分たちの目指すべき方向は明確になり、世界はいっきに広がった。
  
僕は少年時代から音楽が好きだった。リズムとメロディーが溶けていくように体に染み込んでいき、心が高揚感に満たされる。すると世界が愛おしくなり、なにかをはじめたくてたまらなくなる。そして、悲しいわけではないのに涙が流れてくる。僕がずっと好きだったのはそんな音楽だ。トラベラーズノートが、もしかしたら、そんな音楽みたいな存在になれるかもしれない。そう思えたのがこの時だった。そして、その思いは今も変わらず続いている。
 
あれから10年。なんだか、先週の土橋さんとのお話もそうだけど僕らの原点みたいな気持ちを思い出させてくれる出来事が最近多いのは、また新しい時代が始まろうとしているからなのかな。

20190617a.jpg