2019年8月13日

自転車旅の途中で

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昨年の夏に続き、トラベラーズバイクでの自転車旅をした。今年は、盛岡を出発し青森を目指している。昨日は盛岡から八戸までアップダウンの激しい中を1日中走り続けたので、今日は八戸からわずか35キロの十和田に宿を決めた。

朝8時に八戸を出ると、昨日と違って平坦な道のりは走りやすく、途中道の駅で休んだりしながらも、10時過ぎには十和田に着いた。ホテルへ行き、自転車のキャリアに積んでいた重い荷物を降ろし、フロントに預けた。まずは、ここに立ち寄ることにした理由の一つでもあった、十和田市現代美術館へ向かった。

高さ4メートルもあるリアルな女性像からはじまる展示は楽しく自転車の疲れも忘れて見入った。個人的に一番気に入ったのは、薄暗い空間に閉店後のダイナーのような空間が再現され、窓には夜の高速道路が広がっている「ロケーション(5)」という作品。入った瞬間は暗くてなにも見えないけれど、目が慣れるにつれて、まっ黒に塗られたテーブルの上のメニューやソルト&ペパーなどの小道具にも気づく。窓に広がる、オレンジ色の街灯が続く道路は、なんとも言えない孤独感や旅情を感じさせ、さりげない音量で流れるBGMも心地よい。まるでエドワード・ホッパーの絵の中に紛れ込んだような気分になって、しばらく座席に座り続けた。
 
隣接のカフェでコーヒーを飲んでくつろぎ、昼食はホテルのチラシで紹介していた十和田名物バラ焼きを食べてみる。豚肉と玉ねぎを鉄板で炒めるというシンプルな料理で、旅先での空きっ腹にはとても合う。鉄板の熱に汗をかきながら一気に食べてしまった。 
 
昼食後は、オープン直後の銭湯へ行く。スーパー銭湯とかではなく、地元の人が行くような古くて小さな銭湯だ。一番風呂を期待してたら、まだ開店して5分だというのに、おじいさんが2人いた。男湯と女湯で真ん中を仕切られているかまぼこ型の建物は、飾り気がいっさいなくペンキ絵もない。雪国らしい質実剛健な佇まいに、これはこれでいいなと思った。
 
まずはサウナに入ると、こちらは誰もいない。独り占めでゆっくり体を温めると水風呂に入った。水風呂は、家庭用らしきステンレスの浴槽がぽんとサウナの横に置かれ、蛇口から繋がったホースが水を流しっぱなしにしている。水風呂に入ると、ざーっと風呂桶から水が流れた。桶に入れて冷やされているスイカになったような気分で、膝を抱えて小さな浴槽に浸かった。まだ明るいうちの銭湯は、平和で気持ちいい。天窓から差し込む光をぼーっと眺めていると、心配事もお湯のなかにみんな溶けていってしまうようだ。お湯にのぼせたら、また水風呂に入ってスイカみたいに体を冷やす。それを何度か繰り返して、外に出た。
 
外に出ると、今度はカフェに入る。そこでコーヒーを飲みながらこのブログを書いている。朝からこの街にいるから、今日1日がまるで、普段の休日のような気分になる。旅先で、こんな時間を持つのもいいなと思った。さて、時計を見るとまだ16時を15分ほど過ぎたところ。旅の1日は長い。十和田現代美術館は、当日なら再入場可能のようなので、もう一度あの暗闇のダイナーに行ってみようかな。
 
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