2019年12月 9日

金沢で襟を正す

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先週、久しぶりに金沢を旅した。
 
金沢は2014年のキャラバンイベント以来なので5年ぶりの訪問。あの時は何時間もかけて車で行ったのだけど、北陸新幹線に乗ったらわずか2時間半。かがやき、早いな。
 
金沢駅に着くと、まずはキャラバンイベントの会場にもなったBenlly's & Jobへ。ここの店主、田中さんは、僕らにとって店作りの師匠のような存在だ。8年前トラベラーズファクトリーができる時、仕入れ方法から仕入れ先、ものづくりの道具などたくさんことを田中さんに教えてもらった。それに店と工房が一体になったこの空間はトラベラーズファクトリーの店づくりに大きな影響を与えてくれた。
 
久しぶりのBenlly's & Jobはやっぱりかっこいい。工房にもお邪魔させていただき、いろいろ面白い話を聞かせてもらった。アウトドアで美味しいコーヒーを飲むための道具について語る田中さんに影響されて、思わず真鍮のアルコールバーナーを購入した。新しい道具との出会いが、今まで知らなかった楽しい世界を予感させてワクワクする。そんな買い物をすることの一番の楽しみをあらためて思い出させてもらいながら、ついつい3時間以上長居してしまった。
 
そして翌日は、コラボレーションでトラベラーズノートのオーガナイザーなどを作ってもらっているTO&FROの工場へ。今回の出張では、来年春にリリースする予定の新しいコラボレーションプロダクトの打ち合わせを兼ねて、工場見学をさせてもらうことになった。
 
TO&FROは1950年より続く老舗繊維メーカー、カジレーネが運営するブランド。カジレーネは、薄さや軽さを追求したり、撥水性や通気性がある高機能の繊維を得意とし、国内外のアウトドアブランドやアパレルブランドにその生地を供給している。コラボレーションアイテムも驚くほど薄くて軽いのに丈夫で、撥水性があって、さらにやわらかいナチュラルな手触りが特徴のオリジナルの生地で作られている。
 
工場では、ミクロン単位の原糸を紡いで糸にする工程から見学させてもらった。肉眼ではただの極細の1本の糸にしか見えないけれど、顕微鏡でみると細かい繊維が微妙にたわみながら絡まり糸になっているのがわかる。そのたわみ方は機械で微妙に調整され、その具合によって風合いや機能が変わるそうだ。
 
次の工程では、編む前に縦糸を均等に並べてロールに巻いていく。ずらりと何百台も並ぶ糸巻きからそれぞれ細い糸が引かれ、ローラーに均等に規則正しく巻き取られていく姿は、なかなか壮観で、まるで美しい巨大なクモの巣ができあがっていくようだった。
そして織機で横糸を通して織り生地になる。それぞれの工程ごとに糸や織り方に問題がないか実際に目で見ながら検査していく。職人は細い糸で高密度に編まれた生地をきめ細かくチェックして糸のムラなどを探し当ててしまう。
 
「どこが問題なのかさっぱり分からないですよ」と言う僕らに、「もしかしたら使うには問題ないかもしれないけど、どうしても気になっちゃうし、それを世に出すことはできないんだよね」と職人らしい責任とプライドを感じさせながらも気さくに答えてくれた。長年の経験に裏づけされた先進的な技術と厳しい品質管理によって培われた、まさに日本のものづくりを象徴するような工場の姿に、僕らは感動するとともに同じものづくりに携わるものとして、襟を正されたような思いになった。
 
さらに、TO&FROの商品の一部は、その専属のスタッフによって工場内で縫製も行われている。一本の糸から生地ができて縫製が行われ、オーガナイザーが出来上がるまでを見ることで僕らはそのプロダクトにさらに愛着が湧いてきた。来年春にリリースする新しいアイテムもぜひ楽しみにしてください。
 
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