2020年3月 9日

There is a reason why we trip to Kyoto.

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もうすぐ春だというのに、新型コロナウィルスの影響で世間はすっかり不穏な空気に包まれている。テレビやネットでは不安を煽る声と、無理に不安をかき消そうとする声が溢れている。たぶん、そのどっちにも本当と嘘が入り混じっているんだろうな。
 
そういえば、9年前の3月もそうだった。あの時は一瞬で1万人以上の方が亡くなり、普通の日常を突然失った人もたくさんいて、原発がどうなってしまうのか分からなくて、今とは比べものにならないくらい切実で身に迫る不安に襲われていた。そんな混乱の中で、5周年記念としてキャメルのトラベラーズノートを発売を迎えていた僕らは、その意義や意味を目の前に突きつけられたような気がした。あの時、自分たちの仕事のことをあらためて深く考えさせられて、導き出せた唯一の答えは、自分たちがやるべきことを粛々と続けることしかできないということだった。
 
今、こんな状況がいつまで続くのかは、僕らにはまったく分からないけれど、トラベラーズファクトリー京都のオープンに向けた準備は粛々と進んでいる。新しいスタッフも決まり、店内に並ぶ商品の発注にレジや什器の手配、そしてもちろん、京都のためのオリジナルアイテムも製作中だ。
 
先週、僕は店内に飾るボードを作った。夜のオフィスでBGMを流しながらトラベラーズノートをカスタマイズしたり、リフィルに絵を描いたり、チケットを貼ったりして、それらを板に貼り付ける。
 
テーマは原点に立ち返りファクトリーでいくことにした。スパイラルリングノートに流山工場の絵を、パスポートサイズのリフィルには活版印刷機の絵を描いた。ブラスペンやクリップとともに、流山工場で見つけた年代物のレンチに、古道具や見つけた歯車も貼り付けた。うん、いい感じだ。もうひとつのボードのテーマはカスタマイズ。見ただけで、トラベラーズノートを自分流にカスタマイズしたくなるようなものにしよう。まずはノートを広げてペンを手に取った。
 
BGMとして流しっぱなしにしていたiPodからザ・クラッシュの「London Calling」が聴こえてきた。僕は、ロンドンを京都に置き換えてKyoto Calling(こちら京都です)と口ずさんで、ひとりでニヤリとした。音楽を聴きながら、ノートに向かっていると不安が消えて、心が穏やかになってくる。かつての旅を思い出し、いつか実現したい旅を想像しながら、ノートに記す。
 
今、旅に出ることができず家で悶々としている人が多いかもしれないけど、こういう時こそ、トラベラーズノートとともに心の旅をしてみるのもいいのかもしれないな。そんなことを考えながら、サンプル作りを進めた。
 
BGMは、ザ・スミスの曲に変わった。「There is a light that never goes out(決して消えることがない光がある)」という曲名から、こんなフレーズを思いついた。「There is a reason why we trip to Kyoto」
 
こんな中で本当にオープンができるのか、そもそもオープンしても人が来てくれるのかもちろん不安だってある。だけどこんな時だからこそ、訪れた人たちがワクワクして、未来に希望を感じられるような場所にしたい。旅がしにくい時だからこそ、旅の楽しさや喜びが心の奥から湧き起ってきて、居るだけで旅をしているような気分になれる場所にしたい。そんなことを思いながら、みんなで粛々と仕事を進めている。
 
それに、トラベラーズファクトリー京都は、4月16日を過ぎてもずっとそこにあるはずだから、それぞれが落ち着いて旅をすることができるようになった時に訪れてほしいな。

きっと心が躍り、夢や希望が溢れてくるような、そんな場所になるはず。
 
There is a reason why we trip to Kyoto.
僕らには京都へ旅をする理由がある。
 
さて、あと1ヶ月。がんばらないと!

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