2020年4月13日

延期と休業

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まだ緊急事態宣言が発令される前で、トラベラーズファクトリー京都の開業日延期が決まる前の、先々週のこと。
 
商品の搬入と陳列のために、2日間の予定で京都に入った。こんな状況だから、この後オープンまでもう京都に来ることができないかもしれない。なんとかこの2日間で形にしようと、僕らは現場に着くと急いで作業を進めた。まずは200個近く届いたダンボールを店内に運び入れ、次々開梱していく。同時にその横で棚やテーブルに次々と商品を並べていった。
 
さらに自分たちで手描きでペイントした看板を壁や柱に取り付けてもらう。サンプルボードをフレームに設置し、棚の上にはレコードやヴィンテージ品を飾った。1日目の夜は、未整理の商品やダンボールの山に埋もれ、終わりが見えなかったけれど、2日目の夕方にはお店らしい空間になってきた。なんとかなりそうだな......予定通り仕事を終えて東京に戻れるめどがつき、少し安心した。

「ちょっと休憩しようか」そう言って、作業の手を休めようとしたその時、突然携帯電話が鳴った。着信は新風館の担当者からだったから、予感はあったけど、やっぱりそうだった。
 
「オープンを延期することに決めました」電話の声は少し言いづらそうに伝えた。具体的な対応について確認し電話を切ると、僕はがっくりと肩を落としながらも、同時にほっとしたような不思議な感覚に包まれていた。一緒に作業をしていたみんなに伝えると、僕と同じような反応をした。そして出荷を止めたり、スタッフに連絡したり、延期に向け、さしあたりこの場でできることをバタバタといくつか処理した。
 
ほっと一息つくと、これからのことを想像し、頭の中は先の見えない不安に包まれた。しばらくここに来るのは難しくなりそうだな。僕は不安を振り払うように、あらためてゆっくりトラベラーズファクトリー京都の空間を眺めた。
 
足場材やパレット材で作られた什器に並んだトラベラーズノートなどのたくさんの商品たちは自分のお気に入りの居場所を見つけたみたいで、みんな居心地がよさそうだ。ものづくりの仲間がトラベラーズファクトリーのために作ってくれたオリジナルプロダクトたちも、誇らしげに並んでいる。高い天井からは、ヨーロッパの古い工場で使われていたファクトリーランプが吊るされ、壁には、手描きの看板やノートのサンプルに、お気に入りのミュージシャンの写真やレコード、旅の写真などが飾られている。本棚にトラックのソファやスツールが置かれたライブラリースペース。他にも......。いや〜かっこいいなあ。
 
僕の貧弱な語彙ではうまく表現できないけど、パーソナルな親密さと手作りの温もりを感じさせてくれる、これまでの僕らの活動の集大成のような場所になっていることを実感した。早くみんなに見てもらいたいという思いをぐっと抑えて、延期の期間をこの空間をさらに研ぎ澄ましていくことに費やそうとと気持ちを切り替えた。
 
週が明けて、緊急事態宣言が発令されるとトラベラーズファクトリー中目黒、ステーション、エアポートの3店舗を一ヶ月休業するという決断をせざるを得ない事態となった。厳しい状況に追い込まれることになるけど、不要不急で生活必需品でもない上に、旅をテーマにしているこの店を閉めるのは、しかたがないことだと思う。皮肉にも、京都のオープンが延期になったのに休業のための準備や話し合いで忙しく過ごした。
 
そして休日。外に出られず、家に引きこもっていた時間の空白を埋めようと、よりみちノート京都にトラベラーズファクトリー京都を描いてみた。
 
ほんとうだったら、今頃はオープン直前で京都にいるはずだったんだよなあ。そんなことを思いながらも、ノートに向かいのんびり絵を描いていると、だんだんと心が穏やかになっていった。また京都に行けるようになったら、あそこのコーヒーが飲みたいな。京都で飲んだコーヒーの味を思い出し、地図にトラベラーズファクトリー の場所とともに、近くのお店やカフェの場所を書き記した。トラベラーズファクトリーからのカフェのハシゴもいいかも。旅のお供に本とノートがあれば1日コースになるな。
 
不安もたくさんあるけど、こんな時だからこそノートに向って過去を振り返り、未来の楽しみへ思いを馳せる。皆様もぜひ、ノートとともに日々を穏やかに暮らしてください。
 
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