2021年3月 8日

B-Sides & Rarities Vo.2

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先週のブログで書いた通り、今月26日にリリースするB-Sides & Raritesは、その成り立ちやコンセプト、使い方から、それぞれのくせもの加減まで含めて、とてもトラベラーズらしいコレクションになったと思っている。
 
トラベラーズらしいというのは、いろいろな意味があるのだけど、例えば、リフィル 耐洗紙のアイデアは、公式サイトのプロフェッショナルユーザーに登場していただいている土橋さんが、クリーニング専門の紙を扱う会社の方を紹介してくれたことから始まった、なんていうこともトラベラーズ的だなあと思っている。
 
トラベラーズノートを介して人との出会いが広がり、それがこのノートの世界を広げてくれるというのが、トラベラーズのこれまでの一番の原動力だったし、今回その起点となってくれたのが、発売前に展示会のコンペでトラベラーズノートを発見してくれて、それ以来ずっとお世話になっている土橋さんだったのも、嬉しいことだった。
 
コットンジッパーケースもそうだった。これはずっと作りたかった商品だったけれど、メイドインジャパンにこだわりがあったため、コストや生産キャパなどの面でハードルがあり、なかなか実現できないでいた。今回、それを解決できたのは、ブラスプロダクトの一部を長年作り続けてくれているMさんが、彼の友人でもある縫製工場の方を紹介してくれたことがきっかけだった。
 
縫製の仕事は、ここ20年くらいコスト削減のため、中国や東南アジアに生産地を次々と移管され、今では日本には縫製工場がかなり少なくなっている。そんな現状の中、あえて国内に小規模の工場を作り、熟練の職人に教えを請いながら、若い職人を育て、技術を継承しながら運営している工場に出会うことができたのだ。
 
Mさんからその工場のことを聞いた時、当然僕らは興味を持ったし、工場の方もMさんからトラベラーズの成り立ちからものづくりの考えを聞いていた上で出会う。最初からお互いの考えややり方をある程度理解し、そこに共感し、敬意を持った上で話を進められるのが人とのつながりによって出会うことの良さだ。
 
先日、工場にお邪魔させてもらったのだけど、7人しかいない小さな工場のスタッフのほとんどがコットンジッパーケースの生産に携わってくれて、それぞれの工程でのこだわりや職人たちの洗練された技を見ることができて、とても感動した。こんな出会いのストーリーもまたトラベラーズらしいと思っている。
 
今回のリフィルのほとんどの生産を流山工場で行っていることもトラベラーズの王道と言える。さらに、それが一筋縄ではいかなくて苦労の連続であるのも、トラベラーズっぽいなあと思うのだ。
 
例えば、リフィル 便箋。便箋は、昔から流山工場ではよく作られている言うならば得意な製品でもある。普通、便箋は天のりという製本方法で作る。便箋の上部の側面に糊を引いて、書いた後に一枚ずつ切り取れるようにする。便箋の表紙は、通常裏の台紙の上部に貼り、それを巻き込むようにしてできている。
 
トラベラーズの便箋は、革カバーにセットしたままで表裏に書けるように、天のりを上部ではなくサイドに縦につけて、表紙も横から開くようにしている。
 
昔からある便箋をトラベラーズノート用として再構築することで、今までの便箋とは違った新しいものが生まれるという、まさにトラベラーズらしいものづくりの考え方で生まれた製品でもある。だけど、そのことによって、ものづくりの現場では今まで簡単にできたことが途端に難しくなり、新しい工夫や作業が必要になるということがよくある。通常の便箋であれば専用の機械で自動的に行うことができる、表紙をつけて巻き込む作業を、トラベラーズノート仕様の便箋では、すべて手作業で行わないとならなくなった。さらにその手作業を効率よく、正確できれいに仕上げるための工夫も必要になる。
 
他にも、すべてのページを両面2色印刷するリフィル メッセージカードは、印刷スピードが遅い活版印刷の現場泣かせの製品だし、リフィル 超軽量紙の紙は薄すぎるし、シール台紙の紙はつるつるして滑るので、普通のノート作りにはない工夫や面倒な作業が生まれている。
 
今回のリフィルは、いざ生産がはじまると、予定通りにいかない事態やさまざまなトラブルが発生していて、それもトラベラーズらしいものづくりのパターンだと思わざるを得ない。だけど、流山工場のスタッフはみんな、それに苦言を呈することなく、実直に仕事を進め、さまざまな工夫や思いもよらなかったアイデアで困難を打開していってくれている。
 
新しいものを作るというのは、苦労の連続だし、むしろそうやって余計に苦労したものほど、愛着も深まるし、お客様の反応がいい場合も多い。そういえばトラベラーズノートだってそうだ。作り続けて15年も経つけど、いまだに苦労が絶えない。
 
発売まであと2週間とちょっと。晴れて発売日を迎えて、手に取った際には、そんなものづくりの現場のことも想像していただけたら嬉しいです。
 
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