2021年6月14日

自転車に乗り思いを馳せる

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東京では、6月なのに梅雨を通り越してもう夏になったみたい。最近の自転車通勤は、ジャケットなしでTシャツ姿に、てぬぐいを首にひっかけて出かけている。暑いとはいってもまだ6月。朝晩の空気は少しだけ冷気を含んでいて、走りながら浴びる風が心地良い。
 
自転車のお供は最近はラジオがお気に入り。今日は何を聞こうかとアプリをチェックし、番組をスタートしてから出発する(ラジオを聴きながら自転車はダメとか、そういことはいいっこなしで)。

自転車はトーキョースローをテーマにしたトーキョーバイクだから、ビュンビュン飛ばすロードバイクを横目に、のんびりペダルを漕ぐ。上り坂ではギアーをローにして、じわじわと浮かぶ汗をてぬぐいでふきながら漕いでいく。東京駅を超えて皇居の前に来ると、ふっと漂う緑の匂いが嬉しい。六本木前の急な坂を登りきれば、あとはオフィスまでなだらかな下り坂が続く。
 
ラジオの話にニヤニヤしたり、フムフムと感心したりしながら、軽快にペダルを漕ぐ。心地よい疲れとともに会社に着くと、まずは冷たい水をコップ一杯ぐいっと飲む。おいしいなあ。本格的な夏がやってくるとTシャツは汗でびっしょりになるのだけど、それを新しいTシャツに着替えた瞬間は、お風呂上がりみたいで、気持ちいい。
 
コロナがやってくる前は、暑い夏でも熱気に満ちたぎゅうぎゅうの満員電車に押し込まれ、乗り換え駅ではまるで巣に向かう働き蟻みたいに行列に連なり歩いて通勤していたけど、それから比べたらもう天国みたいだ。昨年春にコロナがやってきて以来、心が折れるような辛いことや、面倒なこともたくさん増えて、正直に言えばあんまり良いことはないけれど、満員電車の通勤がなくなったのは数少ない良いことのひとつかもしれない。
 
先週は、ここでもお知らせした通り、トラベラーズファクトリーエアポートの限定商品のオンラインショップでの販売とあわせて動画をアップしている。おかげさまで予想以上のオーダーもいただき、さらにメールやSNSには温かいコメントをたくさんいただきとても勇気付けられました。しばらく販売していますので、ぜひ。そしてトラベラーズファクトリー京都はオープン1周年を迎え、さらにナイジェル・ケーボンとの新しいコラボレーションに、京都のノベルティ企画の情報をアップしたりで、緊急事態宣言中で心を揺さぶられながら、バタバタと過ごしている。
 
いろいろ忙しく過ごした自転車での帰り道は、映画のサントラを聴くのが最近のお気に入りだ。ちょっと話がそれるけど、中学生の頃にテレビの洋画劇場で見て感動した、1970年代の映画で「サンダーボルト」という作品がある。クリント・イーストウッド演じる元銀行強盗が、仲間と再び銀行強盗を計画するというストーリーなんだけど、トラブルに仲間割れ、切ない別れなどがあって、最後はクリント・イーストウッドがひとりキャデラックを運転しながら、アメリカの田舎道を走っていくというシーンで映画は終わる。

同じイーストウッド主演の「グラン・トリノ」も最後はイーストウッド演じる頑固者の主人公から愛車のグラン・トリノを受け継いだモウ族の青年が海岸沿いを車で走らせて終わる。ロードムービーの傑作「パリ・テキサス」もそうだ。離ればなれの家族を引き合わせた主人公トラビスは、ひとり車で走り去るシーンで映画が終わる。
 
どのシーンも悲喜こもごもいろいろあって、ハッピーエンドとバッドエンドがグラデーションのように混ざり合ったような複雑な感情の中で、ひとり車を走らせるシーンで映画は終わる。どれも僕の好きな映画の好きなシーンだ。そういえば、この前見た「ノマドランド」もそんな終わり方だったな。
 
エンディングで流れる音楽もまた素晴らしい。「サンダーボルト」ではポール・ウィリアムスの素朴な佳曲「Where Do I Go From Here」、「グラン・トリノ」ではイーストウッドが自らがしゃがれ声で歌うテーマソング「Gran Torino」、「パリ・テキサス」ではライ・クーダーがスライドギターで奏でるブルースの古典「Dark Was The Night」が、ラストシーンを感動とともに引き立ててくれる。
 
いろいろあって心がざわつく夜の帰り道、ひとり車ではなく自転車に乗りながら、これらの曲を聴き、映画の登場人物に想いを馳せる。日々の暮らしは、映画みたいにそう簡単にはエンディングはやって来ないから、ハッピーエンドとバッドエンドがグラデーションのように混ざり合いながら続く日々をなんとかやり過ごしてやっていくしかないんだよな。まあ、いろいろあるけど、がんばりましょう。
 
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