2024年3月18日

東京のおすすめ

 オランダのディストリビューターを運営するブリジッタから、東京のおすすめの場所を教えてほしいとメールが来た。TOKYO EDITIONの発売とあわせて東京をテーマにしたフライヤーの制作を考えているとのこと。基本的には東京に行ったことがあるスタッフやお客さんによる東京のおすすめスポットを掲載するのだけど、僕にもひとつ挙げてほしいとメールにあった。

「トラベラーズノートを使っている方への東京のおすすめスポットといえば、やっぱりトラベラーズファクトリーだけど、それが当たり前すぎるなら、銭湯をおすすめする」と僕は返事を書いた。さらに「東京には銭湯という公共のお風呂がたくさんあって、そこでは、たった3、4ユーロで日本のお風呂文化を体験できるよ」と添えて送信した。

「銭湯は面白そうね。中目黒のトラベラーズファクトリーはもちろん掲載するつもりだったから、その近くに銭湯があったら教えて」とブリジッタから返信があったので、僕は中目黒にある光明泉を教えることにした。ここは数年前に改装されたばかりできれいだし、露天風呂もあるし、きっと海外の人でも入りやすいはず。さらにグーグルで検索すると、英語のサイトまである。僕は、そのリンクをメールに貼り付けて、フライヤーの完成を楽しみにしていると書いて送信した。

 実際にオランダの人がおすすめスポットとして、東京のどんな場所をピックアップするのか楽しみだった。東京に住んでいる僕とは違った視点で選ぶだろうし、彼らにとって、東京はどんな街に見えるのかも気になる。

 東京は旅先としても楽しい街だと思う。例えば、音楽好きだったら、下北沢や渋谷のレコード屋巡りをしたら、それなりに掘り出しものを見つけられるだろうし、ステーショナリー好きの人たちの文房具屋巡りのひとつとしてトラベラーズファクトリーを訪れてくれる人も多い。ラーメンの食べ歩きに、喫茶店や居酒屋巡りも楽しそう。海外の他の街と比べても、B級グルメから高級レストランに、和洋中のみならず幅広いラインアップの食事が食べられるのは、東京の魅力のひとつでもある。それに円安の今であれば、街全体がバーゲンセールのような感覚を味わえるはずだ。

 そんな中で銭湯を東京のおすすめスポットとして挙げたのは、もちろん僕自身が銭湯が好きだということもある。それに旅先で僕が行きたいと思うのは、まさに銭湯のような場所だったりもする。

 フィンランドのサウナやトルコのハマムはわかりやすく銭湯のような場所と言うことができるけれど、もっと広い意味で、現地の人が日常の中で気軽にちょっと休息をしたり、仲間と寛ぐような場所が好きなのだ。例えば、朝の香港の飲茶に、パリのカフェ、イギリスのパブ、スペインのバルなどもそんな場所。ハレの日に行くような豪華な店ではなく、地元の人が日常的に通うような店がいい。その中に紛れ込んで、その土地に住む人のように一緒に寛ぐのが旅の醍醐味だと思っている。

 東京だったら、朝は喫茶店でモーニングを食べながらゆっくり過ごし、自転車にでも乗って好きなお店に博物館や美術館などを2、3件くらい巡る。疲れたら公園の芝生に横になったりして休み、お昼はお蕎麦屋でカツ丼とか中華屋で半チャンラーメンなんかを食べる。そして、夕方まだ明るいうちに銭湯に入って、風呂上がりに居酒屋でお腹を満たす、みたいな旅がいいなと思った。

 実際に海外へ旅に出ると、行きたい場所がいっぱいあって、なかなかそんな風にのんびりした旅はなかなかできないのだけど、いい歳だし、これからはもうちょっと余裕のある旅をしたいと思う。

 海外から「TOKYO EDITION」を手にして東京にやってきた旅人たちが、東京のどんな場所を訪れて、どんな旅をするのかと想像するとワクワクしてくる。トラベラーズファクトリーを訪れてくれたら、ぜひ、彼らのノートの中を見せてもらいたいし、東京の旅についての話を聞いてみたい。きっとそこには自分たちが住む東京を楽しむヒントもたくさんありそう。

 銭湯といえば、実は昨年末に「湯道」から依頼を受けて、トラベラーズでポスターのデザインをしました。「湯道」ということで、イラストでお風呂のマナーを描いています。もし銭湯の脱衣所などで「湯道のススメ」とタイトルが明記されたポスターを見かけたら、それです。

 ちなみに僕は、半径約2キロ圏内に7件の銭湯がある銭湯激戦区に住んでいるので、その日の気分や天気、混み具合などで、行く場所を変えているのだけど、その一つの銭湯でポスターが貼られているのを見つけました。あともう一枚は、倉敷在住のトラベラーズスタッフが発見し、写真を送ってくれました。皆様も探してみてください。