2024年6月17日

トラベラーズファクトリー京都の4年間

 先週、トラベラーズファクトリー京都は4周年を迎えた。ちょうど4周年を迎える前日、京都のスタッフが何枚かの写真を添付して、「明日インスタにアップお願いします!」と伝えるメールが送ってくれていたのに、翌日になるとすっかり忘れていた。夜遅くに店長から「4周年の投稿お願いします!」とメールを受けて慌ててアップ。なんとかオープン記念日のうちに投稿できた。

 だいたい僕は誕生日とか記念日を忘れがちで、何日か前にカレンダーに記されているのを見て思い出し、忘れないよう心に留めておくようにするんだけど、当日になるとすっかり忘れてしまう。そういう日をちゃんと覚えていて、しれっと気の利いた言葉をかけたり、さりげなくちょっとしたギフトをあげられるような大人になりたいんだけどうまくいできない。

 それにしても、京都がオープンしてからの4年間はあっという間だったような気がするし、いろいろあった分、ずいぶん長かったような気もする。なによりコロナ禍が始まるタイミングでのオープンだったということもあり、そのことに翻弄された4年でもあった。

 ちょうど京都のオープン直前、準備の佳境だった2020年3月になると、コロナの状況は日に日に悪化していった。それでもオープン予定は4月だったから、ガラガラの新幹線に乗って京都に行き、ディスプレイや商品の陳列などを行った。夜になり、なんとか目処がついた頃、携帯電話が鳴って、新風館の担当の方がオープンの延期を告げた。その直後、最初の緊急事態宣言が発令。世の中の状況は一気に変わり、旅はもちろん、外出することも憚られるようになった。

 それから実際に京都がオープンするまでの2ヶ月間は、トラベラーズとして苦難の時期だった。京都のオープン遅れだけでなく、中目黒はじめ全店舗が休業を強いられ、まったく予想ができない再開の日を待ちながら、それまでどうやり過ごすのかを考える日々。売上がなくなるのも辛かったけれど、トラベラーズにとっての最も大事なテーマでもある「旅」が否定されることで、自分たちの存在意義さえも否定されたような気持ちになったことがなにより辛かった。

 その後、感染者数の増減によって何度か予定日が延期され、6月11日に無事オープンが決まった。今となっては懐かしい三密回避にソーシャルディスタンスなんて言葉が叫ばれていた中で、ビニールシートやアルコール消毒液の設置などのコロナ対策も講じつつ、不安の中でオープンを迎えた。それでも、ひさしぶりにお客さんと話をしたり、笑顔を見たりすることができたのは、本当に嬉しかった。

 だけど、最初の1年はまさにコロナ禍に翻弄された中での営業だった。県をまたがった移動の自粛が求められたあの頃の京都は、今では想像できないくらい静かだった。新幹線は空いていてホテルも安く、今では人でいっぱいの嵐山や清水寺もゆっくり歩くことができた。不謹慎だけど、閑散としたあの頃の京都を旅することができたのは貴重な体験だった。

 もちろんその分、店に来てくれるお客さんは、ほぼ地元の人ばかりで、売上も厳しかった(ただ、今では京都という初めての土地で、最初に地元の方にゆっくりじっくり向き合えたのは、とてもよかったことだと思っている)。

 あの頃の京都は静かなだけではなく、東京に住む僕から見ると、感染者数の違いもあってか、どこかギスギスしていた東京よりも、ゆったりしていて解放感があった。トラベラーズファクトリー京都もスタッフのおかげで明るい空気に満ちていて、旅の高揚感もあいまって、ここに来るのは待ち遠しいくらい楽しみだった。

 それからも「Go To トラベル」に、その後の感染拡大など、コロナの状況でお客さんが増えたり、減ったりを繰り返しながら、なんとか運営を続けることができた。そして、3周年を迎えた頃から、急に海外からのお客さんが増えて、これまでのゆったりした雰囲気から、一気に忙しくなった。

 最近では、京都の有名観光地はコロナ前の旅行客数を追い越し、オーバーツーリズムなんて言葉が叫ばれるようになった。それにあわせるように、トラベラーズファクトリー京都も、世界中からたくさんお客さんが足を運んでくれている。それはオープン前にイメージしていた姿でもあったし、ありがたいことでもあるけれど、急激な変化に対応するのも大変だった。

 そんな山あり谷あり波乱万丈の4年間だったけれど、なんとか続けることができたのは、コロナ禍の頃から通ってくれている地元京都の方々に、「やっと来ることができました」と言いながら、遠くから足を運んでくれる方々のおかげです。

 これからの京都がどうなるのか、観光客は増え続けるのか、それとも多少は減っていくのかは、僕らには分からないけれど、1000年以上の歴史を持ち、その間、常に人々を魅了し続けた都市。ここが歴史と文化を感じさせる魅力的な場所であることはきっと変わらないと思う。

 京都を旅する機会がありましたら、ぜひトラベラーズファクトリー京都にも立ち寄っていただけたら嬉しいです。スタッフ一同、旅人の皆様のお越しをお待ちしています。