2025年4月14日

Walk On The Wild Side

 トラベラーズファクトリー京都に続いて、中目黒でも先週末にビクトリノックスのイベントを開催しました。お越しいただいた皆様ありがとうございます。

 今回のイベントにあわせて、新しい色でコラボバージョンのクラシックSDを作ったのだけど、その中で個人的に一番気に入っているのが、緑色のボディに「Walk On The Wild Side」のロゴをプリントしたバージョン。

 この緑色のボディは、もともと2017年のトラベラーズノートのオリーブエディションが発売した際に作ったコラボレーションのクラシックSDと同じ色だ。僕らはこの色を気に入っていたのだけど、ビクトリノックスによるクラシックSDのリニューアルで、作れなくなってしまったのだ。

 クラシックSDのリニューアルによって、カラーバリエーションは、色から20色に増えた。どちらかと言うとヴィヴィットなカラーが増え、さらに透明樹脂を使った色が新たに加わり、なぜかお気に入りだった緑は廃盤になってしまった。

 それで、トラベラーズファクトリーでは、2022年にデザインを一新して新しいコラボデザインのクラシックSDを発売することになった。すると、ビクトリノックスが発売と合わせて、ボディの色を前後で自由に組み合わせることができるカスタマイズイベントを企画してくれて、トラベラーズファクトリーで開催。自分好みのオリジナルバージョンのクラシックSDを作ることができるこのイベントは、好評を博したくさんの方に参加いただいた。

 昨年の秋ごろ、ビクトリノックスの担当の方と、次のイベントのための打ち合わせがあった。そこで僕は、未練がましく「やっぱりあの緑が好きなんですよね」と呟くと、今までは難しいと言っていた担当の方が、「もう一度、スイスの本社と掛け合ってみます」と言ってくれたのだ。そして、新たにオリジナルカラーとして緑のボディを製作してくれることになった。

 それだけ思い入れのある色だったので、今回のイベントでは、せっかく違う色を組み合わせることができるのに、僕はあえてボディの色は両面とも同じ緑でオーダーした。

 もちろん、ハシモトがデザインした「Walk On The Wild Side」のプリントも気に入っている。このメッセージは、ルー・リードの曲名から来ている。ワイルドサイドとは、荒れ果てた未開の荒野を意味するのだけど、そこから転じて、苦難があっても、常識や社会規範に捉われない自由で冒険的な生き方を目指すという意味もある。

 ルー・リードの歌詞を読んでみると、ヒッチハイクでニューヨークにやってきたゲイ、楽屋中の男と関係を持つ女優、ジェームス・ディーンに憧れるスピード狂の女など、ニューヨークのアンダーグラウンドで暮らすちょっと危ない人たちが、どこか自嘲気味にこの言葉を言っているように見える。だけど、そんなアングラ的な世界観は置いておいても、ジャジーなウッドベースをバックにした、ルー・リードの呟くような歌声を聴いていると、ジワジワと「ワイルドサイドを歩いちゃえよ」と追い込まれていくような気分になる。

 どちらかと言えば、理屈っぽくて腰が重く、石橋を叩いて渡ろうとする傾向がある僕は、背中を押して、奮い立たせるくれる存在が必要だと自覚している。まさにルー・リードの歌声も僕にとっては、そういった存在だ。

 いつも手元にある日常の道具であり、同時に便利な旅の道具でもあるクラシックSDに、この「Walk On The Wild Side」をプリントしているのも、同じ理由になる。やるべきか、やらざるべきかと悩んだときに、ふとこのメッセージを目にして、「ワイルドサイドを歩いちゃえよ」と背中を押してくれる。そんな存在になれば嬉しい。そして、ワイルドサイドに向かって足を進めていくとき、トラベラーズノートとこの緑のボディのクラシックSDは、きっと旅の心強い相棒になり、困ったときに役に立ってくれるはず。

 ちなみに、今回のイベントでは、「Walk On The Wild Side」をプリントした緑のボディに加えて、4種類のオリジナルのボディを用意したのだけど、僕のお気に入りでもあるこの緑が一番不人気だった。もちろん、他のデザインも素敵だと思っているし、そのこと自体を嘆くつもりはまったくない。だけど、あんまり売れないと、オリジナルカラーである分、生産ロットが多いこともあって続けるのが難しくなってしまうんだよなあ。

 こちらのリニューアルしたコラボレーションバージョンのクラシックSDですが、5月にオンラインショップを含めたトラベラーズファクリー各店で発売します。その際は、よろしくお願いします!