2024年はトラベラーズタウンへ
今年もまたダイアリーの季節がやってきました。
トラベラーズノートのダイアリーは、8月に公式サイトでラインアップを発表し、9月に発売というパターンを最初の発売以来18年間続けているのだけど、今でも夏の暑いときに、12月ごろから使い始めるダイアリーのことを伝えることにちょっとした違和感がある。ただ、業界ではこの9月の発売はむしろ遅い方で、多くのダイアリーは8月の上旬には発売されていて、早いものだと7月に発売しているものもけっこうある。なぜか年々、他のダイアリーの発売日が早くなっていく傾向があって、そのため、営業部門からはもっと早く発売するようにリクエストされることも多いのだけど、遅れるのは得意だけど、早めるのは不得意なトラベラーズとしては、なんとか現状維持で勘弁してもらっている。
でも例えば、7月に発売するとなると、6月にラインアップを発表ということになってしまうわけですよね。まだ今年の半分も終わってないのに、来年のダイアリーのことを伝えるなんて急かしているみたいだし、まだ夏も来ていないのそんな先のことを考えるのはなんだかもったいないような気がしてしまいます。だから、夏の暑さの峠を越えたこの時期に発表し、秋の気配が少しずつ感じられる9月中旬に発売するというのは、実際に使う方にとっては決して遅いということはないと思うし、むしろそれでも早いと思う方もいるんじゃないかなとも思っています。
ちなみに、作る側である僕らは、ダイアリー本体の日付のレイアウトを春頃からはじめつつ、6月ごろから来年のテーマは何しようかと考えはじめる。これもダイアリーの進行スケジュールとしては、たぶん他社と比べるとかなり遅いと思うんだけど、僕らとしてはできるだけ、そのときの空気感とかリアリティみたいなものをダイアリーのテーマを組み込みたいし、そうするとぎりぎりまで待って決めた方が良いと思っている。
今年に入って海外から日本にやって来る旅人が急激に増えてきて、トラベラーズファクトリーもコロナ前のように、国内のお客さんと海外から旅をしてきたお客さんが入り混ざる光景をよく見るようになっていた。さらに春以降には、付き合いのある海外の友人や知人がコロナ以降はじめて日本にやってきて何年振りかに会うという機会も多くなった。旅の高揚感に満ちている彼らと久しぶりに会って話をしながら、次は彼らの住む町で会いましょうとなんて言って別れる。僕らはそんな旅人たちから旅心を刺激され、ワクワクするこの感覚をテーマに盛り込みたいと思った。
そこで、以前ブログに書いた「The Travelers Are Back In Town」というキーワードが頭に浮かんだ。昔の仲間がまた街に戻ってきて、そこから何かが始まる予感に興奮する様子を歌うシン・リジーの曲名「The Boys Are Back In Town」をもじった言葉だ。それを橋本に伝えると、さらにイメージを広げて、いつも旅人が溢れる町「TRAVELER’S TOWN」をテーマにしようということになった。そこは旅人と地元の人が交錯する町で、街を歩けばトラベラーズカフェにトラベラーズホテル、トラベラーズレコードもあって、旅の高揚感に満ちた場所。2023ダイアリーのカフェのテーマに純喫茶のデザインを加えた橋本は、「トラベラーズタウンには昔ながらの商店街もあるといいですね」とさらにアイデアを加えた。
トラベラーズタウンのことを頭に浮かべ想像していると、ペトゥラ・クラークの「Downtown」が頭の中で流れてきた。これも以前ブログに書いたけど、孤独で辛いとき、賑やかなダウンタウンに行けば、悩みも不安もぜんぶ忘れることができるという意味の歌だ。僕はダウンタウンをトラベラーズタウンに言い換えて口づさみながら、ダイアリーガイドに載せる文章を綴り、トラベラーズタウンの街並みと商店街のイラストを描いた。それを橋本がレイアウトしてダイアリーガイドを制作し、さらに下敷やカスタマイズシール、クリアホルダーをデザインして、ダイアリーのラインアップになった。
その後、完成したサンプルが届くと、トラベラーズタウンのマップになっている下敷に、トラベラーズタウンのロードサイドのサインボードや、商店街に並ぶ看板のようなステッカーが、旅心を掻き立ててくれた。僕のイラストもいい感じに橋本がクリアホルダーにレイアウトしてくれて、ローリング・ストーンズのアルバムで1曲だけ収録されているキース・リチャーズがボーカルをとる曲みたいな、ラフで抜けた味わいを感じてもらえたらいいなと思った。ブルーハーツのアルバムにおけるマーシーが歌う曲もまさにそうだし、レノン=マッカートニーという稀有な天才たちに阻まれ、アルバムに2曲しか収録されなかったジョージ・ハリソンの曲もそうだけど、弁当に例えるとトンカツとか焼きシャケのような絶対的なメインに添えられた、きんぴらとかひじきみたいなおかずもけっこう好きです。
話は脱線してしまったけど、2024ダイアリーを手に取って、あらためてトラベラーズタウンを旅することを想像してみる。トラベラーズトレインに乗って、トラベラーズステーションに降り立つ。まずはホテルにチェックインして、部屋に荷物を置き、軽装になって町に出る。まずはトラベラーズカフェでゆっくりコーヒーでも飲み、下敷のマップを見ながら、どこに行こうか、夜には何を食べようかと考える。
まずはレコード屋や本屋があるから覗きに行こう。その後は、ちょっと妖しく混沌とした雰囲気が魅力の商店街を歩いて、そこにある銭湯でお風呂を浴びよう。風呂上がりにダイナーでお腹を満たしてホテルへ帰る。明日はサーカスでも見に行こうかな。時間が余ったら、床屋もあるみたいだから髪の毛を切ってもらう。旅先で床屋に行くのってけっこう好きなんだよな。夜はホールでライブを見るのもいいな。
そんなことを旅先で考えている時間は、ほんとうに楽しいですよね。今回、トラベラーズタウンをテーマにしたダイアリー関連アイテムで、そんな旅の楽しさをあらためて思い出して、旅をはじめるきっかけになってもらえたら嬉しいし、2024年は旅をしようと、堂々と声高く宣言できる1年であってほしいと心から思っています。
トラベラーズノート2024ダイアリーは、9月14日に日本全国で発売します。トラベラーズファクトリーでは、例年通り革タグのプレゼントもありますので、ぜひ楽しみにしてお待ちいただけたら嬉しいです。